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家族

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作品名ある精肉店のはなし
これは書いておきたかった。
日曜日、「アイム・ソー・エキサイティング」を観るつもりでタイムテーブルを調べたら都合良く引き続きこの映画を見られることに気がつく。
チラシを見てはいたんだけど、タイトルからして韓国か中国のちょっと怖い人肉系 笑 かと思っていたら。
軽い気持ちで見てはいけないような内容で一瞬怯んだけれど是非とも観たくなった。
前日友人がフェイスブックで、長蛇の列で残念ながら見られなかったと記事をUP。
どうやら土日の2日間は監督とカメラマンの舞台挨拶があるということらしくお客さんが押し寄せている。
恥ずかしながら私はこの映画について何も知らなかったので驚くばかり。
当日、アルモドバル映画に入場の際、チケットを買って整理券をもらっても並べなかったら観られないのか聞いてみると、エンドロールを観ずに出て来て番号の所に入れてもらえば間に合うとのこと。
言われたとおりに出て列に割り込ませてもらい無事入場。
補助イス含めて満席。
映画はおもむろに始まりちょっとぎこちない監督の声のナレーションが聞こえてくる。
開始から何分たっただろう、とにかく間もなくいきなり牛の眉間にハンマーが突き刺さる。
前に観た映画では大きな工場で流れ作業の様に牛が屠殺されていった。
この映画では、競りでも始まるようなザワザワした活気の中でいきなり屠殺が始まる。
こんな風に家族で牛の飼育から小売まで全てをこなすことは珍しいらしい。
とは言え、その屠殺について何も知らなかった私には珍しいのかどうかもわからなかった。
この映画は殺される牛についての映画ではなく、代々牛を屠殺することを生業にしてきた家族のはなしだった。
それは彼らの先祖の選択ではなく、そうすることを強いられそこから抜け出せない制度の中で生きてきた人たち。
現代に生きる三人の兄弟とその家族は、差別や偏見をなくすためこの映画の出演を了承したのだ。
凄い勇気と強さを持った家族。
なのに画面に映る彼らのなんとおおらかで優しさに満ちた顔。
尖ったところは見当たらない。
いつも家族で助け合い人生を楽しんでいるように見える。
当たり前に生きるっていうことが素晴らしいと思える。
父親の姿を思い浮かべ、人を裏切らず正直に生きることを守り続ける兄弟。
苦労がなかったはずはない。
今だって辛いことがあるはずだ。
だけど当たり前に家族は前を向いている。新しい家族が増え、子供達は成長して、親たちを見てまっすぐに育っていく。
舞台挨拶で監督が話していた。
「脅しではない」
牛を屠殺する場面を見ても残酷だとか怖いとは感じなかった。
私たちが食べるためにこういうことをしてくれてる人達がいたことに気付かされた。
こういうことがこの国にあった。
今でも残るものがある。
知らなければいけないし、正しいことを伝えていかなければならない。
そういう意味で考えさせられる映画ではあるのだけれど。
それよりもこの家族の姿に励まされれような暖かい映画だったこと。
それを作った監督とスタッフの素晴らしさ。
映画の途中、舞台挨拶の途中で涙が出るんだけど、何の涙かわからない。
なんで泣けるのか意味は沢山あるんだろうけど、とにかく胸が熱くなって。
現在は単館上映で全国を巡回中。
福岡は当初の予定より延長上映が決まり2月の上旬まで観られる。
その後の予定は知らないけど、是非多くの人に観てもらいたい映画。
知らなかった監督の前作も観てみたい。

by dandanjunjun | 2014-01-28 15:53 | Comments(0)