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イロイロ ぬくもりの記憶

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なんか甘ったるい邦題で公開中は観てなかったので録画で。
全然甘ったるくない。
いや、むしろ気持ち良いほどシビア。
途中までちっともかわいくない子供と、疲れきった母親、なんかイライラさせる父親。
やってくるメイドのテリーも暗くて辛い。
のわりには最初から惹きつけられる。
他民族国家と言われるシンガポールってどんな国だろうという好奇心も手伝ってか。
そういえばシンガポール映画って観た記憶がない。
検索してみたら、映画文化はまだこれからといった模様。
この映画の監督も30歳。
自らの記憶も踏まえて映画にしたという。
やんちゃな男の子がメイドに心を開いていくというとちょっと甘い記憶のようになるけど、それを無理なく甘すぎなく映せるのは、背景にあるこの時代の厳しさがリアルに感じさせるからだろう。
良いアパートに住み、共働きで子供2人(1人はまだ妊娠中)という中の上の家庭を持つ夫婦が、経済的につまづき、それによって精神的にも弱くなっていく様は、ただひたすら働くフィリピン人女性と比べて滑稽にも見えるし、どこの国も通る道なのかとも思える。
他民族の中のアイデンティティと、その中で外から見える格差、そういうものがないまぜになって複雑極まりないものに見えるけど、それで成り立つ国があるという事実。
名前も言葉も肌の色もみんな違う中で、相手の国や立場を思い遣れるのは理想だろう。
ある種の序列が秩序を守っているのが現実ならそれは守るべきものなのかもしれない。
親族が集まってのパーティーで、席が一つ足りなかった。
まだ歩けないほどの赤ちゃんの席が必要だと言ってメイドを外で食べさせる。
でも、「すまないね」という気持ちを持つ大人はいて、子供は外で一緒に食べようとする。
良い事悪い事、人を喜ばせる事、悲しませる事は、日常から学んで行くもの。
たとえどんな状況でも心を通わせられる可能性はある。
シンガポールの暮らしが少し見られるこの映画はとても面白いと思えた。
by dandanjunjun | 2016-07-04 07:43 | Comments(0)