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午後の遺言状

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新藤兼人監督。
まだ若々しい乙羽信子夫人の遺作。
こんなの観ると、日々のイライラもなんだか馬鹿馬鹿しく感じてしまう。
人間は老いる。
もちろん、今の積み重ねてる日々がいずれこんな穏やかな晩年に到達するんだろう。
主人公は杉村春子。
女優は毎年避暑に山荘にやってくる。
そこの管理を30年任されている豊子が乙羽信子。
粗雑な田舎の女だけど、芯の強さは振る舞いや言葉の端々に感じられる。
信頼され、それに十分に応えている。
そこへ来客が・・・。
この数日間の別荘での出来事が老いた二人の女には重大な展開に繋がっていく。
確かに重大で、悲しい出来事もあるのに、不思議と観ているうちに、当たり前なことに思えてしまう。
実は豊子の娘は、女優の夫との間にできた子供だった。
何故今頃打ち明ける気になったのか。
しかも、「愛していたから」と妻に向かって言い切る。
衝撃を受けた女優は怒りに震えるが、それはほんの一瞬で、どんどん心に変化が・・・。
いまの私たち世代に置き換えたら、絶対に同じ結果にはならない。
老いるということがどんなことか、許す、受け入れるということは歳を重ねて得られるものなのか。
そこに信頼関係が関わっているのか。
いずれにしても「老いる」という言葉は、イコール「生きる」ってことなんだろうな。
この監督の映画の生々しさを、若い頃の作品ほどは感じなかったけど、それでもやっぱりこの監督の作品だと思わせるシーンはちゃんとある。
人間は老いても生きてる以上、生々しく存在してる。
by dandanjunjun | 2009-11-25 10:21 | 映画 | Comments(0)